木造船と言うと、最近の日本では「北朝鮮の不審船」みたいなものばかり話題になりますが、歴史的にみれば木造の船のほうがずっと多かった訳です。

木造船を大量に造るために、ヨーロッパの森林が大きく破壊された、というのは歴史の話によく出てきますね。

18世紀に活躍したイギリス海軍の戦列艦「サランダー」は建造にオークの成木だけで3400本が使われたとか。(環境制約と産業革命 : 木材資源とイギリス海軍戦列艦/大西悠

ヴィクトリー (HMS Victory)

トラファルガーの海戦においてネルソン提督の旗艦だった戦列艦「ヴィクトリー」の建造にはオーク3500本が使われたとか。

とにもかくにも巨大な木製品であったので、膨大な量の木材が必要とされました。この為、強力な海軍力を保持しようとする国にとって、いかにこれらの木材資源を確保するかということは死活問題でした。国土を荒廃させる国もあれば、他国から輸入しようとする国もありました。そして造林して、200年後の戦力として蓄えようとした国もあったと聞きます。

ギリシャ文明

ペルシャ戦争以後アテネは強力な海軍力を背景に繁栄したが、発展とともに人口も増加し、暖房や調理のための木炭の需要も増大し、アッティカ地方では森林の減少が進んでいったとされている。これをさらに進めたのがペロポネソス戦争であったと考えられる。紀元前5世紀後半のギリシャはアテネとスパルタの2大勢力に分割されていたが、この両者の間で戦争が始まったのである。当時、木材は海軍国のアテネにとっては特に重要であったと考えられる。このため戦争が始まるとすぐにスパルタ軍がアッティカ地方に侵攻し、森林を伐採したようである。戦争の長期化とともに森林の減少は進み、長い戦争の末にアテネもスパルタも共に衰退し、ギリシャ世界の覇権は森林を有していたと推定される北方のマケドニアへと移っていった(出典 ジョン・パーリン「森と文明」、湯浅赳男「環境と文明」)

平成7年版環境白書

ヴェネツィア

画像はヴェネツィアじゃなくてマルタのガレー船

 このガレー船は、すべて国営の海軍工廠で建造され、その材料となる木材は領土内の豊かな森林から潤沢に供給された。
 しかし交易の拡大やイスラム勢力との度重なる海戦のための大量のガレー船建造により、やがて領土内の森林資源が枯渇し始める。
 15世紀末にはオークやマツ、モミなどの森林の厳重な保護政策がとられたが、時すでに遅かった。イスラム勢力とキリスト教勢力の最後で最大の海戦となったレパントの海戦では、軍船建造のために25万本の成木が伐採されたといわれ、これが領土内の木材資源のほとんどを枯渇させてしまう。
 こうして精強なガレー船団に支えられたベネチアの覇権の時代は終わる。

森林枯渇で終わりを告げた海の女王ベネチアの覇権/日本船主協会:海運資料室:海運雑学ゼミナール

デンマーク

デンマークの文化と歴史において、オーク材は非常に重要な役割を果たしています。
バ イキング時代の船はオーク材で作られていました。
オーク材は当時も今も、その強さと 丈夫さから、船の建造に大変適しているのです。
16~19 世紀には、列強としてのデンマークの存在を確固たるものにするデンマーク海軍の大型戦艦を建造するため、オーク材は必要不可欠となっていました。
一隻の戦艦の 建造には、樹齢200年を超えるオーク材が1400本以上も必要だったため、国力維持には オーク材の備蓄が求められました。
そのためデンマーク政府は、 伐採と植林を同時に コントロールすることとなったのです

Scandinavian Living

一隻の戦艦の建造には、樹齢200年を超えるオーク材が1400本以上必要とされています。そのため、デンマーク王国の国力維持にはオーク材の備蓄が必要不可欠となり、デンマーク政府は伐採と植林を同時にコントロールするようになりました。
しかしながら1801年〜1814年のイングランドとの長期にわたる戦いによって、デンマークの艦船は破壊されあるいは拿捕され、オーク材の供給が不足する非常事態となってしまいました。
これを受けて当時のデンマーク国王は、将来の戦艦建造のためにオーク材を植林することを命じたのです。この時植林されたオーク材が、「海軍の森」です。時が経ち、技術が発達すると、戦艦建造にはオーク材は使われることはなくなりました。
今日の私たちはこれらの樹齢200年の素晴らしい木々を、持続可能性の高い住宅づくりという平和的な目的で使うことができるようになりました。

wellnesthome
アサカラ
非常に面白そうなテーマであり、海外では「森林と海軍力」についての専門書も出ているそうです。アサカラが勉強出来るか分かりませんが・・・
A氏
林業史にとどまらない「文明と森林」の話ですもんね~。きっと欧米では多いんでしょうね、木造船ファン。

【昔の林業写真】木造船の出来るまで その1

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